【MyBestShot】「宿舎の夜に国境は無し」

 ソウル市長との面会、在韓メディアの訪問、板門店ツアー、ナヌムの家訪問・・・。日韓学生フォーラムを振り返ると、いかに濃密な内容であったかを思い知らされる。行く先々で自らの無知を痛感した。

 私は大学で韓国語を学んでいたため、韓国・朝鮮に対する関心は比較的強かった(それもまた井の中の蛙であることをのちに知るのだが)。取り分け、かの国の同年代が抱いている政治への関心には敬意を持っていた。フォーラム前年に当時の朴槿恵大統領を退陣へと追い込んだ蝋燭デモでは、同年代の若者たちが積極的に声を上げていた様が印象深かった。

 だからこそ、フォーラムで韓国人学生と話し合えたのはとても有意義だった。外から見た日本は私たちが身にまとってきた観念とははるかに違う。慰安婦問題も南北問題も、多かれ少なかれ過去の日本が関わっている。私たちはそれを知り、また伝えなくてはならない。ジャーナリストを志す一介の学生として肝に銘じた。

参加者の中には中国人学生もいたため、期せずして日中韓の学生討論会の体を成した。私たちは毎晩、宿舎で深夜3時頃まで語り合った。時に白熱し、時に笑い合った。そこに国境は無かった。宿舎で語り合った仲間たちとは、フォーラムが終わった今も交流が続いている。

もし、これからフォーラムに参加する誰かがこれを読んでいるならば伝えたいことがある。最初は不安かもしれない。言語の壁もあれば、歴史観のすれ違いもある。時に苦みを覚えることもあるだろう。しかし案ずるなかれ。このフォーラムにはかけがえのない経験と出会いがある。それは一生涯、糧としてあなたの中に息づいていくはずだ。臆せず臨んでほしい。

良いことばかり書いていると訝られるかもしれないので、それ以外のことも書こう。私事だが、フォーラムで無知を思い知らされた私は韓国に留学することにした。就活の準備不足という不安を抱えつつ半年間現地で暮らすことになった。まったく「フォーラムのせい」でこうなるとは。

(猪股修平)

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